ジョブカン10周年:ジョブカン統括責任者インタビュー

プロフィール

株式会社Donuts 執行役員
ジョブカン統括責任者 石山瑞樹

2012年に株式会社Donutsに入社し「ジョブカン勤怠管理」のサービス責任者に就任。マーケティング・制作ディレクション・営業支援・ブランディング構築など、多岐にわたる業務を兼任し、クラウド勤怠管理システムシェアナンバーワンのポジションにまで成長させる。その後、ジョブカンのシリーズとしてワークフロー、経費精算、採用管理、労務管理、給与計算をリリース。

ジョブカン10周年おめでとうございます。2012年入社と最も長くジョブカンの成長を支えてこられましたが、Donuts入社の決め手を教えてください。

ありがとうございます。
Donutsとは、前職でWEBサイトの制作を依頼したことが初めの出会いでした。
成長性の高いインターネット業界でアイデアを実現したいと考えるようになり、経営基盤がしっかりしたDonutsへジョブカン営業責任者として入社しました。

2012年:利用機能数に応じた料金プランに変更。お客様の要望を反映

もともとジョブカンは社内向けのシステムだと伺いました。

そうですね。自社のアルバイトを管理するために作られたシステムです。実際に運用してみると社内からの評判が良く、「これは他社にも販売できる!」と手ごたえを感じたそうです。その後改良を重ね「ジョブカン勤怠管理」として2010年5月にリリースしました。

当時は拡販に苦労したそうですね。入社後まず取り組んだことを教えてください。

2010年のリリースから私が入社する2012年までの2年間で、契約数は約10社でした。
ジョブカンは勤怠とシフト管理の機能が充実していましたので、まずはこれらの需要が高いサービス業、飲食店を中心にアプローチし契約数を伸ばしていきました。
営業を続けるうちに、お客様から「勤怠管理は使いたいけれど、シフト管理は必要ない」といった要望が出るようになりました。確かに、業態によって必要な機能は違いますし、使いたい部分だけ契約できる料金体系の方がお客様の要望にしっかり答えられると感じました。そこで機能を自由に組み合わせられる料金プランに変更しました。

【現在のジョブカン勤怠管理の料金プラン】

2013年:”広さ”よりも”深さ”を追及した機能追加を実施。KGIを導入社数に設定し邁進

2013年から強化した機能追加について、重要視したポイントはありましたか。

画期的で目新しい”広い(Want)”機能よりも、無ければ自社の勤怠を管理できない”深い(Must)”機能を追加することを重要視していました。
例えば、出勤簿の集計を日・月・週のどの設定で実施するかは企業によって異なります。また、フレックス勤務に対応した機能も必要でした。
顧客へのヒアリングを繰り返し、細かいながらも汎用性が高い機能の追加に3年ほど注力しました。サポートを外注せず自社で完結することで、速いスピードで機能追加できましたね。

営業での目標設定も特徴的と伺いました。

通常は売上を目標とすることが多いですが、ジョブカンは契約社数を目標に掲げています。そうすることで、お客様の要望をいかにサービスに反映しているか、そして導入いただいているかをすぐに把握できますよね。この考えはコーポレート・スローガンである「PRODUCT FIRST」にもつながります。

当時のターゲットは大型企業より中小企業でした。目標が契約社数のため、母数が多い中小企業に焦点当てるという面もありましたが、大型企業は独自のルールが多く、要望を受けて機能を追加しても他企業に活用できません。であれば、中小企業向けで汎用性の高い機能を豊富に取り揃え、シェアを獲得しようと考えました。
領域にもよりますが、リリース間もないサービスは中小企業をターゲットに定め、機能開発と営業を実施するべきだと考えます。

2014年:ジョブカン独自の取り組みを実施し、資料請求数が15倍に

競合がひしめく中、他にはない施策を打ったのが2014年だそうですね。

当時、競合と言われる勤怠管理システムが30社以上ありました。ジョブカンは後発のサービスなので、その中でもほぼ最下位でしたね。より多くの方に選んでいただくためには、競合が講じた施策をなぞっても効果は出ないと考えました。
そこで、以下4点に注力しました。
1.法人向けIT製品比較サイトの勤怠管理部門で1位獲得を目指す
2.無料でジョブカンの一部機能を使うことができる「無料プラン」を提供
3.お客様自身でジョブカンのアカウントを発行できる「WEBアカウント発行」の追加
4.固い印象の販促サイトを「まずは試してみよう」と思える親しみやすいデザインにリニューアル

多くの方の目に止まり資料請求していただけるよう、IT製品比較サイトでの1位獲得を目指しました。
また、法人向け・個人向け問わず成長しているサービスの施策をジョブカンに活用しましたね。特に販促サイトのリニューアルは大きなチャレンジでした。リスクを考慮しつつ、効果が芳しくないようならすぐ元のデザインに戻そうと考えていました。
結果としては成功し、資料請求数の増加に大きく寄与できました。
今振り返ると「あらかじめ利点やリスク、失敗した場合の対策を抜け漏れなく検討」していたことが、斬新な施策を成し遂げられた理由だと感じます。
これらの取り組みにより、資料請求数が15倍になり、サービスサイトのPVも2倍になりました。

このタイミングで、「サービス業向け」とアピールしていた販促サイトも「企業向け」に変更したとか。

そうですね。お伝えした通りジョブカンは当初サービス業・飲食店向けのサービスとして発信していました。比較サイトでの1位獲得により注目が高まり、これまでにない業界のお客様が販促サイトに訪れるようになったのです。そこで、「企業向け」のメッセージングに変更しました。一方で、勤怠・シフト管理に強みを持っていることは変わりません。これまでメインターゲットだったサービス業・飲食店の方からも引き続き多くお問い合わせはいただいていましたね。

2016年:前年10月には導入実績5,000社突破。ニーズ変容と課題を踏まえワークフロー/経費精算、採用管理をリリース

2015年10月には導入実績5,000社を突破し、2016年から新シリーズのリリースが始まります。ワークフロー/経費精算の開発のきっかけを教えてください。

ジョブカン勤怠管理の知名度が高まり、勤怠管理システム導入コンペで選んでいただくことが増えました。
その一方、これまでは「勤怠管理を徹底したい」という要望が多かったのですが、「勤怠だけでなく社内全体をクラウド化したい」というお声をまれにいただくようになりました。
ニーズの変容を受け市場分析を実施。2016年2月に稟議や各種届け出の申請・承認が可能なクラウドシステム「ジョブカンワークフロー」と、経費精算クラウドシステム「ジョブカン経費精算」をリリースしました。

2016年9月リリースの「ジョブカン採用管理」についてはいかがでしょうか。

採用管理は、勤怠管理と同じく社内課題から生まれたサービスです。積極的に採用を実施した分、人事部の候補者管理業務も増えていました。この課題を解決するため社内で開発が進んでおり、当初はジョブカンとは別サービスとしてリリースする予定でした。
しかし、社内クラウド化を希望する企業様をより多く支援できるという考えから、ジョブカンの新サービスとして追加することになりました。

新サービスの営業はまずジョブカン勤怠管理の顧客から実施されたのですか?

ワークフロー・経費精算・採用管理いずれも、各サービスに問い合わせいただいた新規のお客様にアプローチしました。ワークフロー/経費精算、採用管理とで営業チームを分け、勤怠管理の営業ノウハウを活用して営業手法を確立していきました。

2017年-2018年:労務管理・給与計算をリリース。強い連携でバックオフィス一括管理を実現

2017年・2018年も新サービスのリリースが続きますがどのような戦略があったのでしょうか。

マイナンバーの管理や紙を多用する煩雑な手続きの多さが労務業務における課題だと感じていました。また、採用管理・労務管理・勤怠管理がそろうことで、内定者の入社手続きから勤怠管理までを一気通貫して行えさらに便利になりますよね。
そこで、2017年ジョブカン労務管理のリリースを決めました。
給与計算については、すでに多くのサービスが提供されています。しかし、バックオフィスに特化したクラウドシステムを作り続けてきたジョブカンが開発することで、業務の一元管理をより強化できると考えました。
競合が多い、いわゆるレッドオーシャンの業界でしたが、ジョブカンを使ってくださるお客様が増え、認知度も高まっていました。そのため埋もれることなく一定の契約数を確保できる自信がありました。

この時期で、新サービスリリース以外の取り組みがあれば教えてください。

JISQなど、セキュリティ回りを整備してより信頼度の高いプロダクトに仕上げました。また、共通IDのリリースでスムーズなサービス間連携を実現しました。
営業面では各業務の親和性が高い勤怠管理・労務管理・給与計算をまとめて導入いただく「人事労務バリューパック」の販売を開始しました。
ジョブカンの知名度が上がったこと、バックオフィスの一元管理を求める声が高まったことがクロスセルに注力するきっかけになりました。
人員も大幅増員し、より実績をあげるための組織強化を図りました。

複数サービスを成功させるには組織体制も重要ではないでしょうか。ジョブカンは“各サービスが独立した「縦割りの組織」”だと伺いました。

ジョブカンはサービスごとにチームを分け、各サービスで営業・開発を行っています。これが「縦割りの組織」です。通常は営業部門が全サービスを販売する「横断的な組織」が多いようですが、全てのサービスで業界No.1を目指す我々にとっては不十分な組織設計だと感じます。自サービスの課題と向き合い、顧客の声を聞くことで機能開発が進みますし、営業手法も洗練されると考えます。
加えて営業フローを徹底的に効率化しており、今では営業1名で一ヶ月に新規有料契約を100社獲得できる体制を整備できています。

ジョブカンに携わる中で一番の失敗を教えてください。

2017年にメンバーの要望で勤怠管理の目標を売上に変更したことでしょうか。
我々は前月の契約社数を超えるという目標を常に意識し、2012年から2017年までの5年間ほぼ毎月記録を更新。成長を続けてきました。
しかし、目標を売上に切り替えた翌月から、契約社数が大幅に減少したのです。高単価の企業を獲得することで目標達成を狙おうという方向に偏りすぎたのかもしれません。
結局、新規契約の売上まで下がってしまいました。
とはいえ、売上に対する意識が向上したことは良かったと思っています。以降は、引き続き契約社数の更新を目指しつつ、売上についても目標に組み込むこととしました。

2019年には初のテレビCMも実施されましたが、プロモーションについてはどのように考えてこられたのでしょうか。

導入実績は販促サイトなどで発信していましたが、業界No.1になるまで過度なプロモーションは行いませんでした。いずれ大企業が参入し、サービスがさらに混在することが目に見えていましたので、粛々とプロダクトの改善と強化を繰り返していましたね。
サービスが十分成熟し、信頼を得られるレベルまで実績を積んだと確信を持てたのが2019年です。同時に、「働き方改革」などがトレンドになっているタイミングでもありました。ここでマス向けのプロモーションを実施することで、認知度をさらに高め市場を獲得できると考え、テレビとタクシーでのCM放映を決めました。

ジョブカン成長の秘訣を教えてください。

以下2つが秘訣と言えます。
・SaaS(Software as a Service)の常識にとらわれない柔軟さと視野の広さ
・P(プラン)の質の高さとスピード感の両立

ジョブカンの提供元である株式会社Donutsは、ゲーム開発から始まり、ライブ配信アプリや電子カルテクラウドシステムまで幅広い事業を展開しています。ジョブカンはSaaS型のサービスですが、その常識にとらわれず、他事業のノウハウを取り入れながら目標設定を行い、施策を講じてきました。
ジョブカンが2012年から2019年までの7年間で5倍 5倍 5倍 3倍 3倍 2倍 2倍 2倍の勢いで成長できたのも、その柔軟さと視野の広さが秘訣です。

また、「PDCAサイクルを回す」とよく言われますが、闇雲に「とりあえずやる」ことはしません。我々はスピード感を持ちながらも、質の高いP(プラン)を生み出すことを大切にしています。
例えばワークフローは開発からリリースまで3ヶ月というスピードでした。早さだけでなく、顧客ニーズの汲み取りと反映、実装機能の取捨選択、ジョブカンならではのデザインなど、質にもこだわり完成しました。
いかに高い精度でスピード感を持って推進できるか、これは全社的にも求められる要素です。

バックオフィス業務システム化の機運上昇や、働き方改革関連法の施行によって業界自体が注目されてきたことも、外的要因ではありますが成長の追い風になりました。
以前はバックオフィス業務システムと言えば会計・給与だったのではないでしょうか。ここ数年で採用・労務・勤怠という、人材視点でのクラウド化が注目されてきました。
中でも勤怠は、従業員がいる以上必ず管理する必要があります。また、手作業に比べて集計・入力工数を大幅に改善できるため、最も重視されたと考えます。

サービスから組織、プロモーションまで、市場理解と顧客ニーズの反映を徹底して施策を打たれてきたことがよくわかりました。
最後に、ジョブカンはさらなる成長を目指して積極採用中だそうですが、どのような方と一緒に仕事をしたいとお考えですか?

前述の通り、ジョブカンは各サービスで業界No.1を目指しています。目標達成のためのミッションは、ハードルが高いものもありますが一つ一つ非常にやりがいがあります。また、どのプロジェクトでも自分が中心になって推進でき、”自分がサービスを変える・作る”ことが叶う環境があります。チャレンジ精神溢れる方には最適の場所ですし、私もそういう方と一緒に仕事がしたいですね。

ありがとうございました。